万川集海の歴史
戦国時代を陰で支えた忍者は、江戸時代に入り天下泰平の世になると、その活躍の場をほとんど失ってしまいました。
それにつれ、それまで”口伝”(書物に残さず、口伝えする)で受け継がれてきた忍術も、急速に衰えていきました。
忍術が失われていくことを防ぐため、1676年、伊賀忍者・藤林保武により万川集海は編纂されました。
『万川集海』という書名は、万の川が海に集まる、すなわち全ての忍術の流儀を集大成したものを意味しており、伊賀・甲賀流における古典忍術四十九流を集大成した唯一無二の忍学書として珍重されました。
これを起こりとする「万川集海」は「源氏物語」と同じように、いくつか系統の異なる「写本」となって現在に伝えられています。
これまでに復刻版、現代語訳版が出版されているものの原本は、「大原勝井本」と呼ばれている写本です。
「大原勝井本」は、全二十二巻、軍用引を含めその内容八帖という大作です。
この万川集海と、正忍記・忍秘伝をあわせて「三大忍術秘伝書」と呼びますが、この中でも万川集海の内容はずばぬけて詳しく、忍術研究において最も重要な古文書と言えるでしょう。
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